信託の仕組み
民事信託と商事信託の違い
信託には、民事信託・商事信託・個人信託・家族信託・福祉信託など、多くの分類がありますが、 一般的に大きく分けると『商事信託』と『民事信託』の二つに分類されます。
もともと信託というのは、営利目的で行われる『商事信託』が一般的なもので、今でもイメージに出てくるのは信託会社や信託銀行によって行われてきた投資信託などでしょう。
しかし、信託法の改正により、営利目的でなければ、信託業免許を持たない法人や個人間においても、受託者になれるように変更がなされたため『民事信託』が注目を浴びるようになったのです。
障がいがある家族のために活用する福祉信託、家族が受託者となる家族信託、個人が受託者となる個人信託はすべて『民事信託』の細かい分類になります。
呼び方が色々とあり、一見複雑に見えるようですが、先にも述べた通り、民事信託と商事信託の違いは、営利目的か否か。
要は、商売(手数料などを取って)として行為をしているかどうかで大別できるということです。

家族信託の基本用語
家族信託を知る上で、『信託』とは一体どんな制度なのか、基本的な用語を用いて説明していきましょう。
信託とは、
『委託者(財産を託す人)が受託者(財産を託される人)に財産を託し、受益者(利益を受ける人)のために、あらかじめ定めた目的にしたがって、管理・処分をしてもらう財産管理・財産承継の手法』のことを言います。

改めて、整理しますと
委託者=財産を託す人
受託者=委託者の財産を託された人
受益者=受託者が管理・処分をして得た利益を受ける人
以上の原則三者によって『信託』は成り立っています。
受託者・委託者になれる人
<受託者について>
受託者は、託された財産を管理・運用する権限を持つことになりますので、意思判断能力を持っている方でなければなりません。
したがって、未成年者や被後見人・被保佐人は受託者にはなれないのです。
また、個人ではなく、法人が受託者になることも可能ですが、営利目的で受託者になることができるのは、信託銀行や様々な条件を満たし、金融庁の許可を得た信託会社だけと、法律で定められています。
ですから、法人が受託者になる場合、『一般社団法人』を活用することがもっともポピュラーです。
<委託者について>
原則としてはどなたでもなることはできますが、そもそも信託をすると言った決定や判断する能力がない方(認知症などによる)は当然のことながら信託することができません。では、未成年者はどうでしょうか?
これは、遺言を利用することにより未成年者でも委託者になることはできます。
ただし、遺言による信託の活用は、民法で「遺言ができるのは満15歳以上」と定められていますので、年齢的な制限があるといったことに注意が必要です。